(捨てられた犬との2週間)
1996年6月26日、我が家の庭に 主人が、お母さん犬と子犬を2匹連れて来ました。 道路を隔てた大きな駐車場で、地主のおじさんが その犬たちを棒で殴っていたらしいのです。 お母さん犬の首に巻きつけられた荒縄の先には、 2匹の子犬が結び付けられていたらしいのですが、 おじさんが殴った衝撃で1匹の子犬の紐がほどけて、 道路の方に逃げて来たらしいのです。 ちょうど主人が庭木の剪定をしながら見ていて、 車にひかれそうな子犬を連れて来ました。 お母さん犬ともう1匹の犬も可哀想と連れて来ました。 もう驚きと困惑で言葉が出ませんでした。 「何かお腹すいてるみたいだから、ドッグフード持って来てあげて。」 「ひどいことするね。捨てられたんだね。」何て大騒ぎ。 ご近所の犬好きの人たちがあっという間に集まって さあこの子たちをどうしようか・・・と相談が始まりました。 薄汚れた3匹の犬は、疲れきっていて、 子犬たちはおどおどして、人間を怖がっています。 お母さん犬は、ドッグフードをあげると 食べずに子供たちにあげようとしています。 たくさんあるから良いのに・・・と、いじらしく目頭が熱くなりました。 3匹の犬は、私には警戒心が初めからなく寄ってきました。 お母さん犬は、私に甘えて「お手」なんかをしきりして、 まるで「助けてください。」と、訴えているように感じ、辛くなりました。 誰がこんな子たちを捨てていったのか? 何故棒で殴らなければならないのか?と 腹立たしく、やるせない思いでした。我が家には、奈々がいるし・・・。 そのうち、とてもおとなしく賢そうなお母さん犬を 飼ってくれる方(Tさん)が決まり、 一番小さいクリーム色の子も、 先日犬を亡くした方(Sさん)が飼ってくれる事になりました。 最後に残ったのがどう見ても狐さんみたいな写真の子でした。 3匹も同時に貰い手がそう簡単に見つかるはずがありません。 2匹でも見つかった事が驚異なのに・・・。 かといって保健所に連れて行けるわけもなく・・・。 保健所に連れて行くことは、「この子を殺してください。」と言ってるようなものです。 私は、怖くてそんなこと出来るはずありません。 主人は、「飼い主が見つかるまで、家で預かりましょう。」 なんて気軽に言っちゃって・・・。 そそくさと、「余りに汚いからシャンプーもしましょう。」なんて楽しそうにしています。 私は、と言うと2匹も飼う自信なんて皆無で 「困ったなぁ〜!、大丈夫かなぁ〜?」と、不安で一杯。 真っ黒で臭気を放つ子犬を二人で3度もシャンプーして、綺麗にしました。 どう見ても可愛いとは言い難い容姿の子は、 人間に対して恐怖心が強く、おどおどしています。 私より主人の方が苦手らしく、 どうも男の人(駐車場の地主のおじさん)にひどい目に合ったのが 後遺症になっている感じです。 人間不信の目が、たまらなく辛く、 「人間ゆえに、こんな子犬の心をずたずたにする権利があるのか・・・。」と むしょうに腹立たしく、悔しい思いが残りました。 子犬は、おとなしい子でした。 「人間への不信感と恐怖心が先立ち静かにせざる終えないのかな〜。」と 弱者の立場にある子犬を、哀しい存在として見ている自分にも 人間であると言うだけの驕りの気持ちがあるのかなぁ〜と 嫌悪感も覚えました。 子犬は、私には初めから甘えてきました。 主人には、男の人のせいか初めは緊張しているようでした。 でもじ〜っと主人の顔を見ていて、「この人は、怖くないな!」と 思ってくれたのでしょうか、次第に子犬らしく振舞うようになりました。 初めてのドライヤーにも初めは怖がりましたが、 「大丈夫よ。」と言うと、おとなしく我慢しています。 ドッグフードもたくさん食べて、すやすやと寝てしまいました。 よほど疲れたのでしょう。 どこから、縄で繋がれたまま歩いてきたのでしょう・・・。 可哀想に・・・。ひどい話です。 奈々は、急に現れた子犬の存在にびっくりして見ていましたが、 子犬が傍に寄っても優しくしっぽを振って黙ってされるがままになっています。 今まで外ではよその犬と会っても、 部屋の中は初めてなので大丈夫かな・・・と思っていました。 奈々のことを安易に考えていた事に、翌日反省させられました。 大違いでした。奈々は、食事を何も食べず、下痢になりました。 急に現れた子犬に主人も私も、かかりきりで世話をやいていたのが ショックだったらしいのです。神経性の下痢らしいのです。 病院に連れて行き、奈々も子犬も診ていただきました。 子犬に何か病気があったら困ると思ってのことです。 案の定、子犬には、回虫がいて飲み薬を飲む事になりました。 奈々も移っていると困るので一緒に飲む事になりました。もう、大変です。 私は、奈々がこんな感じだと可哀想なので、早く新しい飼い主さんを・・・と 子犬を抱いて、ご近所やお店の人にお願いに歩き回りました。 奈々は、車の時は連れて行きましたがお留守番です。 その事もショックだったのでしょう。 4日もご飯も食べず、下痢も続き、私はパニックでした。 奈々の心のケアー、子犬のケアーと、てんてこ舞い。 子犬なので手がかかります。 奈々が第一の心とは別に、トイレに連れ出す回数も 子犬にかかる時間のほうが多く、複雑な思いでした。 幸い子犬は、聞き分けのいいおとなしい子で、 トイレもお部屋の中ではしないし、奈々にも従順です。 何でも奈々の次にとちゃんと待っているし、 いたずらも「No,いけない。」と言うと、すぐ止めてお腹を見せます。 お顔はちょっと変わった感じの子ですが、素直な可愛い子です。 私は、ちょっとシェットランド・シープドッグに似ているこの女の子の子犬に、 イギリスの詩人のShelley(シェリー)と言う名前をつけて、とても可愛がりました。 見た目にはちょっとお世辞にも可愛いとは言い難いこの子犬は、 中身はとてもおりこうないい子でした。 人間不信のこの子の心の傷を少しでも癒すことが出来たら・・・と 結構必死でお世話していました。 反面新しい飼い主さんを見つけて手離すのだから 愛情を注ぎ過ぎると、別れが辛いから・・・、 極力控えなければ・・・という思いもありました。 でも気が付くとめちゃめちゃ可愛がっている自分を 又第三者的に見て「いけない!いけない!」と思うことしきり。 (何でも夢中になるのが私の悪いところでもあります。) 私のその思いが奈々に解るのでしょう・・・。 私をShelleyに盗られた感じがして、淋しかったのだと思います。 決して奈々を蔑ろにしてなどいないのに・・・。ごめんね、奈々! Shelleyの飼い主が、ようやく見つかったのは、 主人と車で何人かの知人にお願いに行った帰りでした。 犬を飼うというのは、決断が必要です。 簡単には、ほんとに見つからないものです。 落胆して、困ったものだなんて思っていたところ、 雑貨屋さんが目に入りました。 子供も来るお店だし張り紙でもお願いしようか・・と、立ち寄ったところ、 「良いよ。ちょうど犬でも飼いたいと思っていたんだ。」と一つ返事。 期待していなかっただけに、 「ありがとうございます。良かった。良かった。嬉しいです。」の連発。 感じの良い優しそうなオーナーと奥様でした。 3人の子供たちも高3、20歳、23歳ともう大きい子達で安心です。 我が家から車で7分くらいの所にあるNさんが、 Shelleyちゃんの新しい家になりました。 奈々が使っていたピンクのケージも、Shelleyのお気に入りのクッションも、 子犬用のドッグフードも器も、ピンクのボールと黄色のサッカーボールも ぬいぐるみも・・・スリッカーブラシもと、そしてスヌーピーの首輪とリードも みんなみんなShelleyのお気に入りを持たせてお願いにあがりました。 良かったと思う反面、やはり無償に淋しくてたまりませんでした。 2週間我が家で過ごしたShelleyも、不安だったと思います。 淋しそうな目でじ〜っと見つめられると、たまりません。 私は、「ごめんね、大丈夫よ! Shelleyは、可愛がってもらえるよ 良い子ねぇ〜! おりこうねぇ〜!」と、撫でて抱きしめてあげるだけでした。 名前も「Shelley って洒落た可愛い名前だね。 その名前のままで良いよ。」と、Nさん。 変えずにそのままの名前で呼んでくださる事になりました。 Nさんは、犬の気持ちを察してくださる優しい方でした。 我が家での2週間、Shelleyは、トイレのしつけ、 おすわり、お手、おかわり、おあずけ、伏せ、 ハウス、おいで、Stay、無駄吠えしない、 玄関から飛び出して行かない・・・と 自然に覚えてNさんの家にいきました。 とてもおりこうな良い子でした。 その後は、家族の皆さんにに可愛がってもらって いつも幸せ一杯の顔をしています。 Nさんの言葉、 「散歩でいろんな犬に会うけど、うちのShelley ちゃんが一番可愛いねぇ〜! Shelleyちゃんが一番!」 思わず笑ってしまいます。 優しいNさんのご家族の方たちに、心から感謝致します。 ほんとうにありがとうございました。 そしてShelleyちゃん、ほんとうに良かったねっ!! とっても嬉しいです! ちなみにお母さん犬は、「ミミちゃん」と命名されて、 Tさんご夫妻に可愛がられています。 ガリガリに痩せていたのに、今では太っちょさんのワン子です。 いつも私を見るとしっぽを振って傍に来て甘えてくれます。可愛い子です。 Shelleyの妹は、「ラッキーちゃん」と命名されて、 Sさんのご家族に可愛がられています。 毎日、ご主人がラッキーちゃんと我が家の前をお散歩で通ります。 ルンルンと楽しそうに歩いています。 「とっても良い子で、可愛くて可愛くて、一緒に寝ているんですよ。」と 目を細めて言っています。 夏にはサマーカットにされてぜんぜん違う犬に変身したりして・・・。 皆、三匹とも幸せで・・・良かった!良かった! そして、皆さんに心から感謝致します。 ほんとうにありがとうございました。 おかげさまで、尊い小さな命を救うことが出来ました。 ほんとうに、良かったっ!! |
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