奈々の場合、老犬で免疫力が低下している事から
2度程再発しています。
女の子の場合外で地面に直接おすわりをさせると
陰部が接触するので、老犬になったら
控えた方が良いのかも知れません。
細菌が入り膀胱炎にもなりやすいです。
(いつもお散歩の後は、お尻もきれいに洗って拭いていたのですが・・・。)
今回は、膿がたくさん出て食欲がなく、
6月末から投薬治療をして様子を診ていました。
が、様子が芳しくないので手術をすることになりました。
初めて膿を見た時には、ほんとに驚きました。
膿は、外に排出された方が体内に蓄積されるより良い傾向なのだと
先生はおっしゃるのですが、目の当たりに膿を見ると、
こんなにたくさん大丈夫なのかしら・・・と不安で一杯でした。
熱は、出ていませんでしたが、何しろ猛暑も伴って、だるそうでした。
夏には、いつも食欲がなくなる奈々ですが、
病気と重なってますます食べず、困りました。
体力がないと手術を乗り切れるか不安です。
子宮も腫れていて、大きいとなお心配です。
奈々は静かに寝ていて、痛がって鳴くこともありませんでしたが、
ほんとは痛いのに我慢しているのかも知れない。
何て思ったりして、心配でたまりませんでした。
奈々は我慢強いので、病気の時は、ある意味困ります。
痛ければ痛いと鳴いてくれた方が、様子がよく解ります。
元気な子は病気になると急に静かになるから良く解ると言いますが、
奈々のようにいつも静かな子は、あまり変わりません。
オムツをして、汚れると気持ちが悪いだろうと時間を見て変えます。
「眠れているようなら大丈夫。」と
おっしゃる先生の言葉を信じ、奈々の様子を逐次観察している毎日でした。



奈々の入院



1999年8月5日、奈々11歳の時
「子宮蓄膿症」と言う病気で開腹手術をしました。

この病気は、子宮に炎症がおき、膿がたまる病気です。
原因はホルモンのバランスの崩れが、考えられます。
風邪をひいたりして抵抗力が落ちている時、
免疫が落ちた時になり易く、細菌が子宮の中に入り
炎症を起こし化膿する病気です。
子供を産んだ事のない犬、
子供を産んで期間が長くあいた犬、
老犬に多く発病します。
子宮が腫れて、炎症により熱が出たり
食欲がなくなり、衰弱していきます。
多飲! 多尿! 嘔吐! 脱水!などの症状がみられます。
痛みもあるらしく、最悪な場合子宮の化膿がひどくなると、
腹膜炎を起こし死にも到る病気です。
早い時期なら、細菌に起因しているものなので、
抗生物質で治る場合もありますが、
再発する事も多い病気です。
投薬治療で治らない場合、
子宮と卵巣の摘出手術が不可欠となります。





午後3時過ぎ、病院から電話が入りました。
「手術は無事終わりました。奈々ちゃんは、おりこうでしたよ。
麻酔をかけるために診察台に乗せたら、
何も言わないのに自分で横になって・・・、
今は麻酔が効いているので寝ています。」
「ありがとうございました。よろしくお願いいたします。」
どっと力が抜け涙が出て言葉になりませんでした。
すぐ会いに行きたいと思いましたが、
手術をした日は、静かに寝ていた方が良いらしいので
明日行く事にしました。
手術が成功してほんとうに良かった。
後は、奈々の体力も含め回復力を祈るのみ。
奈々が家にいないのは、初めてのことです。
いつも静かな奈々ですが、傍にいないと何か変な感じです。
何も手につきません。
ふとこんな思いは、以前にも感じたことがある気がしました。
娘の入院の時です。
娘は、喘息などで4回ほど入院を体験しています。
家族の者が入院となると、心穏やかではいられません。
心して本人の前では、気丈に振舞っていても一人になると、
どっと落ち込み疲労感が押し寄せます。
病気は、ほんとに嫌ですね。
その日の夜は、眠れませんでした。





翌朝、面会に行きました。
奈々は寝ていたのにお迎えに来てくれたのかと
起き上がり嬉しそうにしっぽを振ります。
思ったよりぐったりしていなくて安心しました。
先生が摘出した子宮と卵巣を見せてくださいました。
金属のトレイにあふれんばかりの大きさに腫れた
子宮と卵巣が入れてありました。
その大きさに唖然としました。
「先生、こんなに大きなものなんですか?」と尋ねていました。
先生は、「普通は奈々の摘出した総量の二分の一くらいだね。
でもずいぶん小さくしてから取ったんだよ。」とおっしゃいました。
こんなに大きな内臓が摘出されて、大丈夫なのかな〜と思いました。
そして、さぞ奈々は大変だっただろうな〜と思いました。
痛かっただろうな〜と思いました。
不思議なことに、摘出したものを見ても、
恐いとか、気持ちが悪いとか、汚いとか、
嫌だとかという感情は、一切ありませんでした。
恐がりの私なのに・・・我ながら不思議でした。





その日は、熱があるので様子を診なければならず、
連れて帰れませんでした。
奈々は、帰れると思っていたらしく怪訝そうな顔をしていました。
「お熱が出ているから、まだお家に帰れないんだって。
ごめんね。やまびこ先生が、『良いよ。』って言ったら帰れるよ。
おりこうにここで待っていてね。大丈夫だよ。
ちゃんとお迎えに来るからね。奈々は、おりこうね。」
となだめるのみでした。

6日の夜11時50分、病院から急に電話が入りました。
様態が急変したのかと驚きましたが、
お注射を打ちに待機室に行ったら、奈々がケージを噛んで、
犬歯の先がかけたらしいのです。
お家に帰りたい一心で、可哀想なので連れて帰っても良いとのこと。
お注射は、通院でも大丈夫だからと言ってくださいました。
すぐ迎えに行きました。
奈々は、治療室のドアの所で待っていました。
「奈々は、鳴かないから、解らなくて・・・。」と看護婦さん。
犬歯の先が左右とも3ミリほどかけてしまっていました。
ショックでした。(歯は大事にしてきたのに・・・。)
いくら犬の歯が強くても、ステンレスのケージを噛めるわけがありません。
よほど帰りたかったのだろうと先生。
生まれて初めての奈々のわがままです。
経過は大丈夫なので通院で・・・という事で
連れて帰れることになり内心嬉しかったのが正直な気持ちです。
あの待機室では、奈々が可哀想でした。
奈々は、家に帰りたくて病院のドアの前から動こうとしません。
頑固です。奈々にこんな面があったのかと、先生も私たちも苦笑いです。
幸い帰れる状態でほんとうに良かった。
家に着いた奈々は、安心したのか死んだように寝ていました。
大丈夫かと時々不安になって息をしているのか確かめたりしていました。
幸い熱も下がって来ました。
開腹手術のメスの後は、20センチほどで、まだ糸が付いています。
痛々しく、さぞや痛かったろうと思うと、目頭があつくなりました。
「奈々、よく頑張ったね!  偉かったね! おりこうだったね! 」





8月7日、午前9時、午後3時、午後8時と3回お注射に連れて行きました。
化膿止めの経口薬も頂き消毒の仕方も教えていただき、家でしました。
何しろ猛暑でしたので傷の化膿が心配でしたが、
奈々の回復力は思っていたより順調で安心しました。
奈々は、もうやまびこ先生の所は、嫌がるかと思い心配しましたが、
大丈夫で以前のように静かにお注射もして頂いていました。
手術10日後、抜糸をしました。
傷もきれいで化膿もしていませんんでした。
ほんとに良かった。その後は、順調で少しずつ食欲も出てきました。

入院は、ほんとに辛いものがあります。
犬も飼い主も出来うるならこんな経験はしたくないものです。





8月4日、入院の前日、夜8時過ぎ以降は、
お水も含め何も口に入れないようにと言われました。
夏の暑い日です。
夜の散歩と朝の散歩の後には、いつもお水を飲んでいたのに、
我慢させなければなりません。
奈々は、「明日、やまびこ先生の所に行って、手術をするからね。
お水飲んじゃいけないんだって、我慢しようね。」と言うと、
哀しそうな顔をして下を向き、「はい。」と言います。
朝も、お水もお食事もあげれません。
朝は、奈々は自分から欲しいと言いませんでした。
ほんとうに感心するほど我慢強く物分りが良いので、
かえって可哀想です。
私は、奈々にいつでも何でも話して聞かせます。
全部の言葉が解らなくても、「明日」、「やまびこ先生」、
「病院」、「我慢」、「お水」、「いけない」・・・と
言う言葉は確実に理解していると思います。
奈々は、良くお話を聞いていて、聞きわけが良く
それがかえって辛いものです。
午後一時から手術とのことで、昼過ぎに病院に行きました。
待機室に入れるように支持されました。
暗くて狭い部屋でした。
あげくに二段になったケージの上に、柴犬がいて
けたたましく奈々を見て吠えます。
外犬らしく体臭もきつく私も「臭いな。」と思いました。
犬の嗅覚は、人間よりも鋭いのです。
犬は、鼻の奥にある臭細胞が人間のおよそ30倍はあるため、
高感度率を数字に表すと、人間の100万倍にもなり
500メートル先の匂いを嗅ぎ分けることが可能らしいのです。
犬の鼻は、人間の約50倍以上も効くらしいです。
耳は、2倍から10倍も聞こえています。
それなのに、こんなに臭い所に・・・と連れて帰りたくなりました。
でもそういうわけにもいかず、尻込みしている奈々に私は、
「今日は、やまびこ先生の所にお泊りするのよ。入ろうね。」と
言わなくてはなりませんでした。
中に入ると今度はケージに入れなくてはなりません。
入り口を開けると奈々は、又後ずさり、
「奈々、先生に治していただかないといけないから、
お迎えが来るまでここに入って待っていてね。
おりこうに待っていてね。」と言い聞かせます。
奈々は、じ〜っと私の話を聞いています。
さっき後ずさりをして嫌がったのに、
静かにケージの中に自分から入って行きました。
その姿を見ていじらしくて、胸が締め付けられました。
涙があふれそうになりましたが、
奈々が反対に私の事を心配するのでこらました。
待機室のドアを閉める時、奈々が私を見つめていました。
「大丈夫だよ。やまびこ先生が治してくださるからね。
ここでおりこうに待っていてね。ちゃんとお迎えに来るからね。
それまで待っていてね。」と何度も言いました。
手術の間は、帰宅してください。と言われました。
待合室で待っていたいと告げましたが、
飼い主の気配を感じると奈々自身が
落ち着かなくなるから・・・と言われました。
帰りの車の中で、涙が止めどなくあふれました。
手術は成功するだろうか。 
奈々の体力は大丈夫だろうか。 
奈々は待機室でおりこうにしているだろうか。
 臭くてうるさくて、不安で鳴いていないだろうか。・・・と
次々といろいろと頭の中を駆け巡ります。
心配になります。
何故人間の子供の入院の時のように、
付き添いをしては、いけないのか。と思いました。
犬だって不安なはず。
飼い主が傍にいてやる方が安心するはず。複雑でした。
そして、「手術が成功しますように・・・
奈々が死んじゃいませんように・・・。」と祈るのみでした。


手術する少し前の奈々
パパによりかかっている奈々
手術後まだ抜糸していない奈々